戦略とはバトルものの要である、けど
たまには古本屋から選ぶようなことはせず、他人のおすすめを素直に聞いてみようと思い立ちました。
ソースはラ研にあげられていたオススメからです。
(※注、このリンクは電子書籍版です)
この系列の『ファンタジー事典』なんてのも購入してあるのですが、先に読み終わったのがこちらからなので……ご了承を。
資料コレクターではないですが、新刊ばかり買うとお金がいくらあっても足りないので中古本を買うようにしています。
この本は、去年に初版が発行された本のせいか未だ古本屋では見かけていないですね。
値段は高めですが、いったいどうなのでしょう。
まず初めに言いたいこと
このレビューを見て、読んでみようと考えている方がいるかもしれないので、最初に言います。
この本は、現実に行われていた兵法、作戦などが様々に載っている本です。
昔の頭のいい方々が、命をかけて考え出した知恵の結晶です。
それらは決して見劣りする内容ではないと思いますが、問題があります。
① 自軍の兵が魔法が使えない、一般的な人間であることを前提としている。
② 敵軍の兵も普通の人間であることを前提としている。
③ 現実に存在した、その時代の素材のみを使用している。
こうやって書くとわかりにくいですが、要は現実にあった武器や兵法ということです。
つまり、巨人が出てくる軍の指揮や転移魔法についての対策、ドラゴンやワイバーンとの戦い方は一切載っていません。むろん、一騎当千の兵の扱い方についてもです。
昔の戦術を参考にすることはできますが、それが一番輝くのは脇役の脇役、一般兵たちです。現実では物量作戦が最強だからです。
ですが、ラノベでは一般兵と戦うシーンは少ない傾向があります。やっぱり派手なボスや将軍を敵役として出したいですし。
差別化を図りたいという意味では参考になるかもしれませんが……。
はっきり言うと。
内容はすごくいいのですが、王道主人公無双系でのラノベ資料と言われると微妙です。
逆に一般兵の格好いいところを書きたかったり、「我が軍の勝利だ!」みたいな物を書きたい人には向いています。
……ここ、結構重要なので。
腹が減っては戦ができぬ
対人戦闘でも、対人外戦闘でも、なくてはならない物があります。
食べ物です。
これを軽く見ていると死にます。餓死です。
人間が一日に食べる量は多いです。
特に運動量の多い戦闘時、食事量はうなぎ登りです。遠い国へ攻め入るときは、運ぶ量もエライことになっています。
しかも満足に保存技術がない世界だったら、どうしましょう。
というわけで昔は食糧問題が一番の課題でした。
遠い場所へは攻めない。領地をゆっくりと広げていく。各地の村々から食料をもらう。
そうして進軍していったそうです。
現実に、現地調達で戦争を仕掛けた国から食料を略奪するのは常識でした。
狭い日本ならいざ知らず、広い国々では死活問題です。
なにせ食べ物がなければ士気はがた落ち。この時代、食べ物(報酬)をくれない人間について行く人はいませんでした。
食べ物の次に必要な士気について
昔はなぜ戦争をしていたのか。
勝ったら大きな利益があるからです。
……つまり、一般人は損得勘定で動いています。
義理や人情もあるかもしれませんが、多くの人は損得勘定で動きます。
ラノベの主人公は損得だけで動かないからこそ輝くのですが、みんな損得関係ねぇとなると主人公は目立てません。個人的にはそういう展開も好きですが。
もちろん一般兵も損得勘定はあります。
自分の国が乗っ取られるのが嫌ならば、全力で抵抗します。
金のために命をかける気のない傭兵は適度にサボります。
相手が絶対に勝てそうになくて、自分の命をかける理由がなければ逃げます。
もちろんこれはお偉いさんにも当てはまります。
連合軍ならば、自軍の兵をできるだけ危険な目に出したくないでしょうし、報酬は多くもらいたいでしょう。
そんなことを全員が思うモノですから足並みがそろわず、ぐだぐだでへっぴり腰な軍隊ができます。むろん、逃げ出したらそこで試合終了なので、士気が低い軍は弱いです。
中世ヨーロッパに、100年戦争というものがあります。そんなに長く続いたのには物資の不足、国の疲弊など諸説あるようですが、士気の低さの点も上げられます。
時代の移り変わりと装備について
最後に装備の話をします。
武器の王道と言ったら剣ですよね、剣。
ですが、槍の方が戦にはよく使われているのはご存じでしょうか。
剣は護身用として、もしくは混戦時用として便利でした。しかし、戦場では槍の方がよく使われていました。集団で槍を構えると、それだけで強固な壁となったからです。
そうすると、剣や槍が多少当たった程度で死なないように、鎧が重要視されました。フルプレートアーマーのような全身を覆う装備、重装歩兵が人気になります。
遠距離武器も有利なので、弓矢も脚光を浴びます。当時は連射速度が遅いとはいえ、重要なポジションでした。実際に、戦場の殺傷数は弓矢が最も多いというのは有名な話です。
とはいえ馬に乗る騎兵に追われたら一巻の終わりですし、近づかれたら無力なので弓兵を守る兵も置かなければなりません。弓兵もただ遠くから矢を射ればいいというわけではないようです。
そんなとき、現れたのが銃です。
連射速度は最悪でしたが、改良を重ねることによって鎧を打ち抜くほどの威力を見せます。その凶悪な威力に装甲を限界まで厚くしましたが、防ぐことはできませんでした。
防御できないのなら重い装備は足かせです。
そのため、重い鎧はどんどんとなくなり、一部の騎兵が使うのみとなりました。もちろん他の武器もあるので、簡素化された鎧は使われ続けました。
その後は有刺鉄線やライフルが発明されるなど、相手をいかに先に無力化するかが主軸の、現代の装備になります。
感想
この本には塹壕や陣形、戦術など幅広く載っていました。
ですが、それを生かせるかと言われると、やはり頭をひねりたいです。
ラノベで昔の軍隊が出て、なおかつその兵士たちにスポットライトが当たることが少ないからです。
……異世界ファンタジーでなら参考にできるかもしれませんが、そこまで重要度は高くないですし。
情報量は多いので、いいネタにはなってくれます。
けど、この本単体の使いどころは難しいかも。
ゲームシナリオのための戦闘・戦略事典 ファンタジーに使える兵科・作戦・お約束110 [ 山北篤 ] |